Out of Far East    

アジアの歴史、民俗、言語、暮らし、読書、映画鑑賞など  by ほおのき麻衣

良質の賃貸集合住宅礼賛

 


住む家は賃貸がいいか持ち家がいいかという意見を目にすることがある。

個人的には無理をしてまで持ち家にこだわる必要はないのではと思っている。

 

富裕層というか経済的余裕のある層は自力でしっかりした構造の持ち家を購入すればいいと思う。借入なしで全額キャッシュで払えるとか、かなりの額の頭金を用意できるとか、後々まとまった臨時収入を当てにできるとか、そういう層は質のいい住宅を購入すればいい。

中古市場に流れてきた時、中間所得層にも手に入れることができそうだ。

 

結婚当初より民間住宅、市営住宅公社住宅、URマンションと様々な集合住宅に住んできた。

世の中は持ち家主義者が圧倒的に多くて、今まで何度も「次は持ち家よ」「どうして家を買わなかったの」とか、さすがに60歳代になると「もう遅いわ」なんてつき離すようにいわれたこともある。

普通にローンを組めそうな暮らしをしているように見られるからだろうか。

理由はいくつもあるが結局お金がないからだった。

その次は、何といっても夫婦どちらもあまり持ち家に興味がなかったことが大きい。周りに影響されて人並みに購入を考えた時期もあったが、ローンとはつまり借金で夫婦どちらも多額のローンを組んだり大きな買い物をする勇気がないタイプで結局賃貸のまま今日に至った。

 

それと地方出身の家人は心のどこかに歳を取ったらふるさとに帰りたいという希望があったかもしれない。今は田舎に住むことのデメリットも知っているので多分ないと思う。

ふるさとに残った同級生からは「都会で家なんか買わないでいつか帰ってこいよ」なんて声をかけられたりした時期もある。

賃貸にこだわった理由をこの「ふるさとに家が」を言い訳に使うと割と納得してくれる。

私は持ち家を購入することはそのエリアにしばられることを意味していて窮屈な感じがしてきた。それと次の物件を探す苦労はあるけれど、引越しの自由、移動の自由は代え難い魅力だった。

しっかりした経済基盤があり、不動産の見極めと売買に長けていれば持ち家購入は問題はないと思う。こういう層向けにデザイン性が高く良質の住宅が供給されたら広い意味で日本列島の資産になると思う。

中間所得層にとっても魅力的な中古住宅になりそうだ。

 

そんなわけで災害が多い時代に入り、賃貸を選択してきたことは我が家の経済状況から考えて間違った選択ではなかったと思う。

 

問題は賃貸の集合住宅の質が良くないことと隣人関係に悩まされてきたこと。

中間所得層向けの比較的質がいいと言われる住戸でも共用廊下側の壁が薄すぎる。

廊下の話し声が筒抜けで自分の名前が出るんじゃないかとヒヤヒヤしたり、隣のテレビの音が大きくて何の放送を見ているかまでわかる。

ベランダ側のサッシ窓を開けっぱなしにすることが多い春や秋の頃、隣から聞こえる競馬放送と強面の住民の熱気が伝わってきてこちらは自分のことに集中できない。

同じ階でなんとピアノ教室を開いている人がいて、当然その音を嫌う人もいて嫌がらせにサッシ窓をピシャリと閉める音も聞こえてきて、こちらも震え上がりそうになった。

当番制の理事会の役員などがまわってきたりしてそれも面倒で、普通は引越しを考える。

 

運よく希望するURマンションに空きが出て入居できた。

別にURマンションを持ち上げるつもりはないが、賃貸住宅として築数十年ぐらいのエレベーター付きの物件は狙い目だと思う。私には理想的な集合住宅だ。

 

構造がしっかりしていて、住まい方のサポート体制も整っている。当番制の理事会やゴミステーションの管理も住民は考える必要がない。ガス釜が故障したときはすぐに新品と交換してくれた。UR側の資産なのでこちらの負担はなし。普通は何十万円もかかるときいた。

家賃は多少高めで設定されているのは仕方がないと思っている。

 

というわけで家賃を払い続ける生活はずっと続く。

老境に入ったので、ローンを払い終えてゆったり過ごしている持ち家の人がうらやましいと思わないわけではない。

この道を選択したというわけ。

 

ではでは