この「よむ(yom)」は岩波書店から出された雑誌だが、どれだけの人が覚えているかな。1991年に創刊されて1994年7月が終刊号になりパッと出てパッと消えていった雑誌という印象がある。
いつからか若者の活字離れが言われていた頃で、将来を案じて各界著名人や作家の立場から独自の切り口で読書の楽しみを語ってもらうという雑誌だったように記憶している。
携帯電話もインターネットも存在していない頃で、活字離れの若者がどこに楽しみを見出して言ったのかは断言する見識はないが、テレビとかマンガかな?
この雑誌が創刊されることをどこで知ったのかは覚えていない。多分購読していた新聞だったように思う。しかも雑誌を刊行するにあたって、広く読者に自身の各年代ごとに記憶に残る1冊を教えてくださいという呼びかけも目についた。
当時私は民間図書館作りに関わっていたので、共鳴するところを見出してそれに応募した。確か創刊号に載ったように記憶している。ただし応募者自体数が少なくて全員載ったはず。
で、雑誌に掲載するということで礼状と図書券か何かが同封されていた。掲載の知らせよりも礼状の方が嬉しかった記憶がある。当時の岩波書店の社長の高明な名前は私でも知っていて、直々の万年筆での縦書きの礼状とサインにいたく感激した。
「手書きだわ」なんて。
具体的には応募者の名前と選んだ本の名前と理由が生年順に一覧できるように掲載された。
選ぶ理由は感激したとか印象に残ってるとか、とにかく1冊と限定されている。
例えば30代の人なら、10代、20代、30代の3冊、50代の人なら10代から50代まで5冊並ぶ。その一覧を横に流して見ていけば、人は20代の頃にどんな本を読んでいたのかがわかるようになっていた。
自分が選んだ本はあの本かなとほろ苦い思い出とともに回想する。ちょっと記憶が薄れてきている。
同じ本をあげる人はたまにいても、当然ながら全く同じ人はいなかった。全く同じ人なんて絶対いないと思う。もしいたら会ってみる価値はありそうだが……やはりいないと思う。
自分という存在はユニークなんだと思う瞬間だ。
当時は30代だったので40代の1冊を追加するならアグネス・スメドレー著『偉大なる道』にする。
ネット上でいろんな人の推しの1冊を知ることができるが、自分も通過した本だけどそれほど印象に残っていないなとか、まるで自分にはピンとこないなっていう本もあり、人さまざま。
日本の出版文化が豊かで流通自体も発達してきたことを表していると思う。
40代ぐらいからは加齢とインターネットが発達してきたこともあって紙の本からは遠くなってきている。社会全体そうだと思う。
今ならあなたの思い出のサイト、ブロガー、ユーチューバーを各世代ごとに一つ教えてくださいになるのでは。
これに選ばれたらすごく名誉なことですよね。
ではでは