Out of Far East    

アジアの歴史、民俗、言語、暮らし、読書、映画鑑賞など  by ほおのき麻衣

面接の日々 ビルマ慕情(11)

 次の日、午前中に誠一郎は職安に向かった。

 三日前に面接を受けた会社から、履歴書が昨日郵送で送返されていたので、もう一度はじめから求人を探すためだった。すでに何通も履歴書を送返されるという苦い経験を積んでいる。社会から求められていないという感情だけが残っていく。

 だが、落ち込んではいられない。

 職安に届いたばかりの新しい求人票は壁に張り出された。誠一郎はまず壁に貼ってある求人を丁寧に眺める。これと思う求人がなければ、正社員の営業総務の求人のファイルを一枚一枚めくりながら探していく。もう何人もの手でめくられてきたので、ファイルは倍以上に膨らんでいた。もうこの段階で他の求職者との競争が始まっている。

 今まで何社も受けて落とされている事実を前に、職員から「条件を少し下げて探した方がいいですよ」と言われた。前の会社が一部上場会社だったからといって、それを基準にすればとうてい見つからないだろうと。職員からすれば、誠一郎と同じような年齢の男性の営業総務職希望者が多いことを知っている。

 誠一郎はなんとか希望に近い求人票を見つけた。受け取った担当の職員は、先方の会社に電話連絡を入れて、面接の日程を決めてくれる。

 誠一郎の自尊心が崩れかけていた。

 

 お昼は駅の中のうどん屋で適当に食べて、そのまま国際交流女性センターに向かった。

 ミャンマービルマ)フェスティバル二日目も誠一郎は会場にいた。そして前日と同じようにビルマ様式の仏塔であるパゴダやミャンマーの僧侶たちの写真をじっくり見る。

 何かに惹かれるように、同じパネル展を眺めてすごした。途中煙草をふかすために休憩する。誰にも邪魔をされない心地よさに満足していた。

 

 次の日、前日に面接を設定してもらった会社へ向かった。

 受付の女性に待合室に通された。

「たくさん来てるんですか?」

 誠一郎は人の出入りの気配を感じて、受付の年配の女性に心配になって訊いた。

「そうですね。今日だけで10人ぐらいの面接の予定が入ってます。明日も続きますからね」

 年配の女性は小声で説明してくれた。

「その中から3人ぐらいにしぼって役員面接になると思います」

 総務職たった一名の募集にこの求職者の数を考えて、誠一郎は今回もだめだろうと観念した。

 受付の女性に会議室まで案内されて、誠一郎は型通りの面接を終えて出てきた。

 

 足は国際交流女性センターに向かっていた。

 同じパネル展の前に立っている。まるで居心地のいい喫煙所を見つけたような気がしていた。